地震と活断層(13):壊したからわかった

update 2004.2/29

壊したらどうなったのか

 実際の3軸圧縮試験の実験サンプルの写真(金谷貴正さん提供)と、模式図です。

 さて前回に引き続いて破壊衝動に駆られた話です。今回は具体的な実験結果ということで、3軸圧縮試験機の話です。
 前回の話のように、3軸圧縮試験機は封圧を変えて実験できるので、地下深部での岩石の破壊を再現できるってわけですね。 で、封圧を変えていろいろ実験すると、封圧によって割れ方がぜんぜん違うんですって。どう違うかと言えば、封圧が低い場合は割れ目は縦に入って(σ1に対して。ってことは油圧ジャッキに対して)、中位の封圧の場合は斜めに、そして封圧が高い場合は小さな剪断面が無数にできて明確な断層はできずにサンプル全体がタル型にふくらむんだそうです。つまり、浅い部分では縦に、中位の深さだと斜めでシャープに、そんで深いと細かく剪断面の集合体になるんだそうです。

 この違いは一体なんなのでしょう? 中位の封圧はいいですよね。上下から押されて、試料内のグリフィスクラックのうち斜めのものに大きな剪断応力が生じて、そういったクラックどんどこ成長していくんですから。でも封圧が低い場合の縦ってなんなのでしょうか? 縦って。そして封圧が高いとなぜ明確な断層面が発達しないのでしょうか? 

 

これが考え方だああ。

 クラックの成長を考える上でポイントになるのは引っ張りです。どういうことかって言うと、右図のように上下から押して、そんで剪断面ができて壊れるんだけど、この剪断面ってのには上面と下面の2つの面が存在してるでしょ。当たり前だけど。ということは、2つの面があるからには、その間に隙間があっても不思議じゃない。っていうかきっとあります。たとえ限りなくゼロに近いとしても。つまり剪断面ができるためにはσ1とは直交方向に、つまりσ3の方向に、開かなきゃいけないってことです。このσ3の方向に開くことが要求されるって点が、剪断面の形態に大きな違いを生じさせる運命の分かれ道なのです。

皆さんが大好きなモール円で説明したら、封圧によってクーロンの基準線の傾きが変化するから、モール円が接する角度が変化するってことで説明できます。中位の領域では封圧に比例して剪断強度が増えるので(摩擦の法則と一緒ですね。垂直応力に比例して強くなる)ので、2θ=60°(つまりθ=30°)の方向に割れるんですね。でも封圧がどんどん大きくなるからといって無限に強くなるわけにゃーいかないので、徐々に頭打ちになるってわけですね。それが高圧の領域。だから高圧の部分ではモール円は2θ=90°(つまりθ=45°)で接します。逆に低圧の領域では岩石の強度は急激に低下するので、2θ=0°(つまりθ=0°)付近で接するので、σ1に対して縦に割れるんですね。

 横の文章と関係ないけど、上の図のつづきです。なんだって低圧領域では岩石強度は急激に低下するのでしょうか??? ほらこの図のように引っ張り領域では、クーロンの破壊基準が、急に低下します。それは、、、

 岩石はいろんな鉱物粒子からできているので、まあ、いわばレンガの壁のようなもんだと思って下さい。こいつは押しには強いけど、引っ張りには弱いのです。レンガの継ぎ目(粒子の境界)が外れてしまうから。
ほらね。

  まずは簡単な中位の封圧の場合を考えましょう。えー第9回を思い出すとわかりますが、σ1とだいたい30°程度の傾きを持った微小なクラックに剪断応力が集中して、すべり始めます。そんで剪断面は面と直交方向にわずかに開いて、隙間をつくりながらすべっていくのです。モール円で言えば上図のまん中のモール円のような角度ですべるってことですね。

 でも、これが封圧が低くなったらどうでしょう? すなわち地表付近の断層って奴ですね。地表近くってことは、あまり圧縮がかかっていません。どっちかというと引っ張りが強く働く世界なのです。これは圧縮されていた岩石が応力解放されるためだと説明されたりします。この辺が地下深部の世界とは違うのです。しかもモール円で見ても、σ1に対してかなりの低角で接することがわかります。圧縮方向に縦方向に割れるってことですね。ここの考え方としては、圧縮方向から考えるから混乱します。ここは横からの引っ張りだと思えばいいのです。そうすれば横から引っ張られて縦に割れるということに合点が行くってもんです。

 で、最後は封圧が高い世界ですが、ここでは周囲から押されているって点がポイントになります。つまりσ3やσ2の方向からもがんがんに押されていて、σ1の方向からはもっと押されているってわけですね。で、こんな世界で剪断させるためには、それ相当の強い力で周囲を押し返しないとクラックが開きません。それはたいへん。クラックが成長する力の源泉は、剪断応力ですから、σ1に対して45°ですべり始めます。でも成長するためにはクラックを拡げなきゃいけない。クラックが広がりやすいのはσ1に直交するっていうか、σ3の方向ですから(σ3=引っ張り応力だと思えばわかりやすいけど、ほんとは押している。σ1より弱い押しで)クラックの方向は45°からグニャッと縦になる方がいい。つまり斜めのクラックだったのが、ひん曲がって縦になるってこと。で、ここで問題になるのは縦になっちゃうとσ1に平行ってことだから剪断応力がゼロになってしまうってことです(モールの応力円の章を思い出そう)。これではクラックは成長できない。このクラックは死んでしまったってことですね。あーあ。つまり封圧が高い世界ではクラックは立派な断層には成長できないのです。微小なクラックが無数にできてしまって、そいつらが少しづつ動いて全体として大きな変位量を稼ぐってわけです。

封圧が低い場合 引っ張り応力が卓越するからに割れる
封圧が中位場合 斜めの集中した剪断面だけで割れる
封圧が高い場合 個々のクラックが成長できないので、
無数の微小な剪断面ができて、全体的に歪む
 

バヤリーってキリンレモン?

 で、何がわかったかというと強度がわかったんですね。壊しておいて強度がわかったというのは、つまり破壊した時にかけた応力が耐えれる限界ってなわけで、こいつがその岩石の強度だってロジックです。で、この強度は封圧が高くなるにつれて増加します。つまり同じ岩石でも地上で壊すのと、海底や地下で壊すのとでは、周囲からの圧力が高い方がより大きな差応力をかけなきゃなんないってわけです。こういった点も破壊と摩擦は似てますね。摩擦も垂直応力が増加すると増加しますしね(第12章「摩擦って何よ」参照、もしくは高校物理を思い出そう)。で、封圧によってどれくらい強度が増加するかをいろんな岩石を使って、バヤリーって人がせっせと破壊しまくってみたそうです。そしたら岩種によらずそれは下図のように一定となりました。

 あ、おもわず断層の強度と書いてしまいましたが、正しくは岩石の強度ですね。

これは不思議なことに岩種にかんけーなし!なのです。ええーっそんなバナナと皆さん思ったことでしょう(そんな古い事言うかっちゅーの)。不思議ですよね。あの砂岩も、カコウ岩もみんなみんな同じ深さなら同じ強度なんて、ありえねえ。つーか、信じられねーっつーのって!!

 いろんな岩石が破壊に至る過程にはいろんな現象が起きていることでしょう。高圧下で変形させられて塑性的にグニャって曲がる奴や、細かい粒子からできていて粒子同士がずり動く奴や、最後まで断固がんばりぬく奴など。でもその結果として破壊に至った時の強度は一定だなんて、、、ぜってーありえなーい?と女子高生も言うでしょう(言わないって)。でも、なぜかそうなるのだそうです。まあしっくりしませんが、本当だとすると「深ささえわかれば断層の強度がわかる」ってことになります。すごいシンプルですね。いいんでしょうか?それとも単に甘いささやきなのでしょうか?

 ところでこれは完全無欠の岩石を破壊した時の話でした。いったん破壊した岩石(つまりバキッと割れて2つになった岩石)をもう一度圧縮するとどうなるでしょう? はい、たった今割れた面を使ってズルッとすべることでしょう。そして最初にバキッとなった時よりも、はるかに小さな力ですべるはずです。当然ですね。すべるだけなんですから。ところで、このすべらすのに必要な力も封圧に依存します。つまり面に垂直な力が増えると摩擦力が増すってことです。これは摩擦の法則からすれば当然ですね(高校で習ったでしょ。忘れた方は第X章を見て下さい)。というわけで封圧に依存して強度が増すという点では、破壊と摩擦はとても似ています。両者をクーロンの破壊基準で表せば、右図のようになります。どっちも封圧(っていうか面に垂直な応力)が増えると、強度も増します。でも、粘着力(封圧ゼロの時の強度。封圧を下げると強度が下がるんだけど、地上でも強度ゼロになるわけじゃーありません。封圧の影響のない時の固有の強度ですね。第X章を思い出してっ)は大きく違います。この違いが摩擦と破壊の違いなのです。断層も最初は破壊の方の強度を持っていたんでしょうが、いったん破壊してしまうと、摩擦の強度しか持てなくなるのです。簡単に言えば、一番はじめに断層が動いた時、つまり断層が生まる時は、頑丈な岩盤が壊れるので、メチャ強力な破壊の粘着力を乗り越えねばならないんだけど、いったん壊れて断層面ができてしまえば、それ以降は同じ面がすべる摩擦の粘着力になるんですな。

 

クーロンがやってくる

 粘着力の違いが「破壊」と「摩擦」との大きな違いですね。っていうか、その程度しか違わないと言うべきですね。 え?「破壊と摩擦は同じだなんて言い過ぎだ」ですって? でも、ビギナーには、「両者の本質は同じなんだ」と言い切ることによって大きく理解が進むと思いますがね。

 さて、第4回にやったようなスリップレディクタブルモデルを起こすためには、特殊な状況を起こさねばなりません。その一つは間隙水圧を上昇させる方法でした(第11回を思い出そう)。
 活断層は時々地震を起こすんですが、その周期はまあいろいろであるにしても、数100年から数1000年おきってとこでしょう。さて、この間に断層は地下にこもって一体何をして過ごしているのでしょうか? 詳しくは別の機会に述べますが、一般にちゃくちゃくと強くなっているようです。極端に言えば、さっきの粘着力が地震直後には摩擦のレベルだったのに、それが徐々に破壊のレベルに近づいていくってなわけです。普段のつきあいのよしみで癒着しちゃうんですね。すると粘着力が大きくなるってことだからクーロンの破壊基準が徐々に上がっていくってことです。もっとも、モール円の成長はもっと早く大きくなるので結局のところ壊れるんですね。ところが震源断層はひじょーに大きいし、近くにもいくつも断層が走っていたりするものです。そのあちこちで、刻一刻と歪みがたまっています。で、もしどれかが動いて、地震が発生したらどうでしょう? その場合には癒着面をひっぺがすかもしれません。つまり粘着力は、破壊直後の状態に引き戻されるので、クーロンの破壊基準線が落ちてきてモール円と接するかもしれません。


 つまり第10回の答えは、スリッププレディクタブルモデルが実現されるためには、間隙水圧の上昇に伴うモール円の移動か、近接する断層の活動などによる粘着力が低下(癒着がはがれるような事)が必要である。ってことになりますね。

 

今回は下記の教科書を参考にさせていただきました。
狩野謙一、村田明広 著 「構造地質学」
ショルツ 著/柳谷 俊 訳  「地震と断層の力学」

四万十帯に便利

地震と活断層

1.でかい地震はどれだけでかい?
2.活断層はなぜ危険なのか?
3.沈み込みサイエンス
4.予知はすでに実現している?
5.ストレスがたまらねー
6.ストレスが原因ですね
7.必殺!グリフィスクラック:破壊力学1
8.クローン?いやクーロン:破壊の力学2
9.モールの美:破壊の美学3
10.スリッププレディクタブルはあり得ない
11.水圧と地震
12.破壊衝動に駆られて
13.壊したから.わかった
14.強ければそれでいいのか
15.摩擦って何よ
16.摩擦の追憶
17.そして地震の発生
18.あなたって.いざという時に...
19.震源になるために:固着すべりの力学
20.バネがすべりにスティフネス
21.質問はありませんか? あのー...
22.原材料表示があればいいのに
23.広大な断層のどこかに
24.脱臼でもしてゆっくりしたら
25.地震の巣 深部で起きていること
26.ダイヤモンドとじんせい −脆性破壊−
27.ハンガーニュークリエーション




 
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